体験企業レポート

福島県南土建工業 株式会社
企業紹介
白河市に拠点を置き、創業121年の歴史を誇る老舗建設企業。明治36年の創業以来、民間・公共工事を通じて地域の社会インフラや施設整備に貢献し、人々の暮らしを豊かにしてきた。今後も品質を重視した建築と迅速なメンテナンス体制を整え、地域社会とともに発展を目指している。
採用課題
高校生の採用に課題を抱えており、企業説明会やインターンシップを実施しても応募に繋がらない現状があった。また、学校や保護者の意見が生徒の進路選択に大きく影響するため、建設業界全体のイメージアップも必要。さらに、学校側が自信を持って勧められる企業となるために、自社の魅力を再発見し、効果的に発信していく取り組みが求められる。
コーディネーター
本田 光 氏
■プロフィール/経済学や経営学、心理学のフレームワークを基に、BtoC・BtoBを問わず、顧客企業のマーケティング戦略やブランディング戦略(新ブランド立ち上げ、リブランディング、採用ブランディング等)、経営・事業戦略、製品・サービス企画開発に従事。主な顧客は、メーカー各社(自動車、食品、IT等)、サービス業(医療、教育、ホテル等)、広告代理店、新聞社、NPO法人など多岐にわたる。
■支援内容/企業の魅力や独自性を整理し、求職者や学校関係者に響く採用戦略を構築するとともに、具体的な実行プランをレクチャー。
STEP1
現場見学を通した建設業界の現状把握
2024年9月27日
現場見学と発見
長い歴史を持つ福島県南土建工業株式会社。その沿革をお伺いした上で、さっそく現場見学をさせていただきました。
堤防補強工事現場(土木)と金融機関の新築現場(建築)を見学し、外部からの視点で感想を共有しました。
<見学を通しての感想>
・土木現場事務所が綺麗で清潔感があることに驚いた
・建設業に従事している方々が、イメージしていた人物像とは異なり柔らかい雰囲気の方が多いと感じた
・社員同士の仲が良くチームワークが良い。見学をしてみると、先輩社員からの指導が手厚いことがわかり、自分でもやっていけそうだと思える雰囲気を感じた
・多方面に気を遣うマルチタスクの仕事だから頭がいい人がやる仕事だと感じた
まだ残暑が残る日差しの中、他社の作業員の方々と連携を図り、地域の大切な環境整備や建築物を造っていく様子は、大変意義のある仕事だと感じました。

ディスカッション:採用戦略と業界イメージ改善の方向性
1日目の後半では、社員の方々を交えながら、現在の採用課題やしらかわ地域内での採用難の状況を整理し、今後の方向性を意見出ししました。
●課題
若手人材確保:ベテランのスキルをどう次世代に残していくか。そのためには若手の人材を早急に入れていく必要がある。
業界イメージ改善:建設業は、数十年前のイメージのままアップデートされていないと感じる。(重労働、低賃金など)
進路指導教員や親の理解不足:高校生採用には進路指導の先生や保護者の勧めが大きく響く。そこから建設業界への理解を深めなければ高校生へのアプローチは難しい。
●戦略提案
本田さんから、以下のアプローチ方法の提案がありました。
・ターゲットエリアの拡大と高校へのアプローチ強化
・家賃補助など遠方学生支援の具体策
・生徒目線での採用説明会や資料強化(社長メッセージ・社員紹介・キャリアパス提示など)
中でもターゲットエリアの拡大では、しらかわ地域にいる学生で具体的にアプローチできる学生は何名くらいいるのか、検索できるデータを用いてエリアの状況を把握しました。
想像以上に少ない数を見て、アプローチするべき対象を広げなければいけないという危機感をもちました。
STEP2
地域と未来を支える建設業:採用戦略と高校生へのアプローチ
2024年10月17日
社員インタビュー:社員のリアルな声から見える会社の魅力
パンフレット作成に向けて、社員4名のインタビューを実施。
それぞれのキャリアや思いをもとに、高校生が建設業に興味を持てる内容を引き出しました。
【社員A(総務部)】
中途採用で入社し、社内の経理・総務を担当。法改正対応やインターン受け入れなど幅広い業務に挑戦中。フランクな職場環境で、上司や先輩にすぐ相談できるのが魅力。繁忙期でも周囲からの感謝がやりがいに。
「未経験でも一歩踏み出せば学びが多い環境です!」
【社員B(土木部)】
高校卒業後、新卒で入社し、現場代理人見習いとして施工管理を担当。デスクワークも多く、役所関連の書類作成も経験。建設業への不安を感じていたが、優しい先輩の指導で成長を実感。
「建設業は社会貢献度の高い仕事。まずは挑戦してみてください!」
【社員C(建築部)】
同業他社から転職し、建築工事の現場監督として活躍。自身が手掛けた建築がGoogleマップに残ることにやりがいを感じる。社長や部長とも意見交換できるオープンな環境が魅力。
「資格を取ればどこでも活躍できる。若いうちは何でも挑戦を!」
【社員D(建築部)】
入社14年目のベテラン。公共・民間工事の工程管理や行政対応を担当。チームワークの良さと居心地の良さが長く勤める理由。職人や協力会社と一体となり、建物を完成させる達成感が原動力。
「建設業は地域を支える大切な仕事。人と関わることで成長できます!」
社員のリアルな声から見えてくるのは、 フランクで相談しやすい社風、 自身の成長を実感できる環境、 そして 社会に貢献できる仕事のやりがい。
高校生へのメッセージには、「挑戦」「成長」「社会貢献」といったキーワードが込められており、建設業の魅力を伝えるための内容がたくさん出てきました。
この内容を基に、高校生向けのパンフレットを作成し、業界の魅力を発信していきます!

高校生へのアプローチ:資料作成の具体策
目指すは高校生に向けた企業説明会!
高校生やその保護者に建設業界の魅力を効果的に伝えるため、配布資料の内容が具体化されました。
< 社長メッセージ >
ポイント:
・人手不足を強調するのではなく、「建設業の真の魅力」を伝える内容に
・高卒から一人暮らしを考える新社会人に向けて、会社ではどんなサポート体制を実施しているか書き出す
<社員の声>
ポイント:
・社員へのヒアリング内容を、キャッチコピーも含めて読みやすくする
・高校生でもわかるような有名な建物の施工事例を載せて、「これ知ってる!」から興味を惹く
< ギャップシート >
ポイント:
・目的は建設業への一般的なイメージを払拭すること。そのイメージに対して、社員の皆さんがどう感じているか、現場の声を重視して作成する
学生だけでなく、その奥にいる保護者の方々や進路指導の先生に向けての発信でもあるため、写真も新しく撮り直し、デザインもしっかり仕上げていく形となりました。
STEP3
地域に根ざした未来の人材育成
2024年11月7日
高校生向け配布物の改善と制作進捗
採用活動を効果的に進めるため、高校生とその保護者、進路指導の先生に向けた配布物の内容が話し合われました。
情報の明確化と魅力的な演出が重点に置かれました。
< 配布物の内容改善 >
・追加すべき内容:
・社員同士の距離感が適切で、プライベートに干渉しない職場環境
・企業説明会の様子がわかる二次元コードの掲載
< イメージギャップ図の工夫 >
・目的別デザイン:
・高校生向けにはキャッチーでわかりやすいもの
・保護者や進路指導の先生向けには具体的な内容を盛り込む
・払拭すべきイメージ:「怖い」「辛い」「安い」という固定観念を排除し、仕事のやりがいや社会的意義を伝える

今後の採用活動計画
採用活動を通じて会社の認知度を高めるため、今後の動きについて具体的な計画が共有されました。
<企業説明会での活用 >
・目的:会社の認知度向上と建設業の正しいイメージの発信。説明中の様子を撮影し、次回以降のツールとして活用
・期待効果:郵送での反応と説明会での直接的な反応の比較を通じて、累積効果を狙う
< 年明けの採用活動準備 >
・スケジュール:
・1~2月: 社長メッセージ、社員インタビュー、イメージギャップ図を高校に郵送
・8月以降: キャリアパスを追加し、再度郵送
・キャリアパスの内容 :
・新卒から22歳までの具体的なキャリアプランを示し、育成計画を可視化する
・保護者や進路指導の先生への信頼感向上を目指す
≪ キャリアパス作成に向けた課題と取り組み ≫
・身に付けるべき仕事内容や、気をつけるべきポイントの棚卸を行う。
・入社後の育成指針を明確にする。
STEP4
成果とまとめ
高校生への魅力発信強化と採用活動の広域展開に向けた取り組み
今回の伴走支援の内容をもとに作成した資料は、11月の地元高校生向け企業説明会にて提示しました。
資料の刷新だけでなく、事前に本田氏より資料を用いた説明の仕方や学生への響く話し方のレクチャーがありました。特に、会社の歴史や会社概要から入るのではなく、社長自らの自己紹介や、自身が高校生の頃に感じていた建設業界のイメージ、大人になってから実際に入ってみて実感したことをストーリー立てて話すことで、学生が自分ごととして捉えやすいといったアドバイスがありました。
例年以上に学生の反応が良く、熱心に聞いてもらえている様子が見受けられ、今後の効果にも期待が持てる結果となりました。
また、代表の小野氏からは「作成資料を県南地域以外の高校にも展開し、会社PRを進めたい」との声もあり、今後は広域的な視点を持ち、より多くの若者に自社の魅力を伝えていく方針が示されました。採用活動の強化と地域を越えた発信の可能性が広がる取り組みとなりました。
<まとめ>
今回の伴走支援を通して、
・求職者(若者や学生)の視点での企業の魅力や強みの整理
・持続可能な採用活動の仕組みづくり
・業界全体のイメージ向上につながる情報発信の方向性
が明確になってきました。
福島県南土建工業株式会社様が抱えていた採用課題に対し、 企業の魅力をより効果的に伝え、学生にとって魅力的なキャリア選択肢として認識される土台が整いつつあります。さらに、建設業界の 「厳しい」「大変」といった既存イメージを払拭し、地域社会に貢献できる魅力的な仕事として発信することで、業界全体のイメージアップにもつながることが期待されます。
