体験企業レポート

永山産業株式会社
企業紹介
婦人服・紳士服を中心とした縫製加工を手がける白河市の縫製企業。 国内外のブランド向けに高付加価値な製品づくりを行い、多品種・小ロットからコレクション対応まで柔軟に対応できる技術力を強みとしている。 現場では、素材や工程一つひとつに向き合う丁寧な仕事が積み重ねられ、長年の取引先からの信頼につながっている。 ものづくりの誇りを軸に、技術を次の世代へつなぎながら、人が育ち、長く働ける会社を目指して歩みを進めている。
採用課題
長年現場を支えてきた技術や経験を、これからどう引き継いでいくかという転換期にある。 人の入れ替わりを前提にするのではなく、育ち、続いていく職場をどうつくるかがテーマ。 技術職としての魅力や働く意味を、改めて言葉にし、伝えていく段階である。 採用と育成を切り離さず、「人が育つ会社」としての姿を描いていく必要がある。
コーディネーター
株式会社イノベーションシフト 代表取締役 浪木克文 氏
■プロフィール/リクルートにて長年にわたり採用・人材育成・組織開発に携わってきた人事領域の専門家。企業規模や業種特性に応じた人事制度設計や、現場に根づく評価・育成の仕組みづくりを得意としている。理論に偏らず、経営者と現場双方の視点を行き来しながら、継続可能な制度構築を支援するスタイルが特徴である。
■支援内容/採用と定着を見据え、人事評価制度とキャリアパスの整理を通じて、現場に根づく人材育成と組織基盤の強化を伴走的に支援した。
STEP1
現場を見つめ直し、永山産業らしさを再確認する
2025年9月8日(月)
技術と柔軟さが支えるものづくり
はじめに、工場見学や実際に製造されたサンプル製品を通じて、仕事の進め方や現場の工夫を確認しました。
婦人服を中心に、多品種・小ロットの製品を手がける現場では、一着ごとに異なる仕様に対応する柔軟さが求められます。サンプル製作から量産までを一貫して担い、「できない理由」ではなく「どうすればできるか」を考える姿勢が、日常の仕事の中に根づいていることが印象的でした。
現場では、素材や柄による違いを踏まえた作業設計や、工程ごとの細かな調整が当たり前のように行われています。こうした積み重ねが、国内外の取引先からの信頼につながっていることが分かりました。
一方で、見学や対話を通じて浮かび上がったのは、「この技術や判断は、どのように受け継がれてきたのか」という問いでした。
現場には長年の経験によって培われた判断力や工夫が数多くあるからこそ、これから先を見据えたときに、「どう伝え、どう育てていくか」を考える必要があります。
企業の強みを再確認すると同時に、次の世代につなぐための視点を持つことが、この取り組みの出発点となりました。
人を育て、技術を未来へつないでいくための対話
代表取締役 永山氏とのディスカッションでは、現在の人材構成や働き方を改めて整理しながら、これからの会社の在り方について率直な意見交換が行われました。
長く勤める社員が多く、安定した現場が築かれている一方で、給与や評価、キャリア形成の仕組みが十分に言語化されていないことが、今後の課題として共有されました。
工程管理や生産性向上に向けた工夫は着実に進んでおり、「技術や工夫がきちんと報われる仕組みをつくりたい」「現場の力を会社全体の成長につなげたい」という永山氏の思いが語られました。
制度を整えること自体が目的ではなく、人が安心して力を発揮できる環境をつくることが、次の一歩であるという認識が確認されました。
続く社員ヒアリングでは、実効性のある制度作りに向けて、現場で働く社員の方々にお話しを伺いました。
働きやすさや職場のあたたかさを評価する声が多く聞かれる一方で、評価や賃金の基準、成長の道筋が見えにくいことへの戸惑いも率直に語られました。また、未経験で入社した社員や、異業種から転職してきた社員に対する明確な成長ステップや、受け入れ体制を充実させる必要性も浮かび上がってきました。現場にある改善のヒントや工夫を拾い上げ、共有し、仕組みを構築することができれば、企業の強みはさらに磨かれていくといえます。
今回の対話を通じて、会社と社員が同じ方向を見ながら、少しずつ未来を形にしていく土台が見え始めました。
STEP2
仕事の価値を見える形にするための対話
2025年10月7日(火)
評価を考えることは、仕事を言葉にすること
本STEPでは、人事評価や報酬の考え方について意見を交わしました。
日々の仕事の中には、生産枚数のように数値で表れやすい成果だけでなく、清掃やミーティング、後輩への声かけやフォローといった、現場を支える重要な役割があります。
これまで当たり前のように行われてきた仕事を一つひとつ見つめ直し、「会社として何を大切にしたいのか」「どんな行動を評価したいのか」を言葉にしていくことが、この回の大きなテーマでした。
評価は管理のための仕組みではなく、頑張りや工夫がきちんと伝わるためのもの。そんな考え方が、対話を通じて共有されていきました。
働き続けられる環境を、どのようにつくっていくか
議論は、働き方や報酬のあり方にも広がりました。
清掃や打ち合わせの時間、育成にかかる負荷など、日々の運営の中で生じるズレをどう整理していくか。制度づくりに向けたディスカッションが、「現場が無理なく続いていくために何が必要か」という視点で、改めて日々の業務を振り返る機会となりました。
課題解決に向けて、浪木氏からは6つのご提案がありました。
いずれも、現場の実情を踏まえながら、無理なく続けられる形で人を育てていくことを重視した提案です。
<人事評価制度構築の提案>
・職務要件を定め時給に差をつける
仕事が出来る人は職務要件的に高い職級であるため、給与をプラスすることで評価する
・清掃やミーティングの在り方を見直し、メリハリを意識した運用
十分に時間をとって実施することが可能になるうえ、社員の方々の満足度が高まる
・班ごとにリーダーを設け、社員育成ミッションを課す
育成も仕事の一つであると認識させることで育成における時間を確保する
・通期での利益を決算賞与として配分するための評価
・評価シートの導入と評価面談の設定
社員の会社に対する思いのヒアリングやモチベーション向上に繋がる
・労働集約からの脱却、固定月給制への移行
会社が売上利益を見立て、固定月給制にする。今までの出来る人が高い生産性で利益を上げていた体制から、顧客からのフィードバックや個人の工夫を社内で共有するなど、ノウハウを活かして付加価値を付けていく。
一気にすべてを変えるのではなく、現実に即した形で少しずつ整えていく。そのためにも、共通の考え方を持つことが大切であり、評価や制度は「成長につながる土台」であることが共有されました。
STEP3
制度を形にし、動かし始める
2025年11月4日(火)
職級・評価の基本構造を描く
これまでの議論を踏まえ、浪木氏より職級制度や評価シートといった具体的な取組が提示され、企業の仕事に合った評価軸が整理されていきました。
①職級制度(職務能力ベース)
試行錯誤、創意工夫、コミュニケーション、技術力、生産性を評価軸として階級を設定し、社員の方々が自身の職級を理解できるようにする。
②表彰制度
会社が大切にする価値観を明確に社員に示すことが可能になる。
③評価シート
評価シートの達成基準や計画は社員の方々が記入し、面談を通じて上長が評価。
最終的に面談後評価シートを完成させる。定性的評価(コメント記入)を導入し、具体的な頑張りを見える化。
④基本姿勢
基本姿勢・法令遵守項目も設け、問題行為発生時は減点対象とする。
制度はシンプルであること、社員自身が理解できることを重視し、まずは運用できる形を目指す方針とし、完璧さよりも、「使いながら育てていく」ことに重きを置いた制度づくりを行いました。
こうした整理により、経験の有無にかかわらず、入社後にどのような役割を担い、どのように成長していけるのかを求職者にも伝えやすい下地が整いました。
制度は目的ではなく、未来への手段
併せて、制度をどう運用していくか、どのように社内へ伝えていくかについても意見が交わされました。
評価や表彰は、結果を決めるためだけでなく、日々の行動や姿勢を共有するためのもの。そうした考え方が、制度設計の背景にあります。
本STEPは、制度づくりのゴールではなく、スタート地点です。
永山産業らしい形で制度を活かし、現場とともに育てていく。その方向性が、この回を通じてはっきりと描かれました。
STEP4
成果とまとめ
永山産業らしい人事制度の骨格を描けたこと
今回の伴走支援を通じて、企業に合った人事制度の基本的な考え方と構造を整理することができました。
この取組は、社内のための制度づくりにとどまらず、「人が育つ会社であること」を、採用の場面でも自信をもって伝えられる状態をつくるための重要な土台となりました。
生産性だけでなく、創意工夫やコミュニケーション、チームで支え合う姿勢といった、現場で大切にされてきた行動を評価の軸に含めることで、仕事の価値を幅広く捉える制度設計が描かれました。
また、制度を「完成させること」を目的とせず、まずは運用し、現場の声を踏まえて育てていくという現実的な進め方を選択できたことも、大きな成果です。
評価と育成を切り離さず、人が育つプロセスを支える仕組みとして制度を位置づけた点に、永山産業株式会社様らしさが表れています。
<まとめ>
今回の取り組みは、人事制度という形を整えるだけでなく、「どんな会社でありたいのか」「どんな働き方を大切にしていくのか」を改めて言葉にする機会となりました。
現場に根づいてきた技術や姿勢を次の世代につなぎ、成長していくための土台が、制度設計という形で共有されたことは、今後に向けた確かな一歩です。
制度はこれからの実践の中で磨かれていきますが、採用の場面ではすでに、働き方や成長の道筋を自分たちの言葉で伝えられる状態となりました。
永山産業株式会社様が培ってきた現場力を軸に、人と技術が自然につながっていく。その未来に向けたスタートとして、本伴走支援は大きな意味を持つものとなりました。