体験企業レポート

有限会社 ふじ電設
企業紹介
福島県矢吹町に拠点を置く「ふじ電設」は、創業35年の実績を誇る地域密着型の電気工事会社。住宅や店舗、工場の電気工事から街灯修繕まで、幅広い分野で確かな技術力と誠実な対応で、地域の「安全」「安心」「快適」を支える存在として、多くの信頼を得ている。これまで培ってきた経験を次世代に伝えながら、お客様の「困った」に寄り添い、地域社会への貢献を続けている。
採用課題
次世代を担う若手を求めて求人媒体に掲載をしているものの、応募がない状況が続いていた。技術職は長期的な育成が必要であり、現役のベテラン社員が在籍している今のうちに若手を採用し、技術を伝承していくことが急務。このままでは、将来的に人材不足による事業の継続が困難になる可能性があり、応募数を1件でも増やしていくにはどうすればいいのか悩んでいる。
コーディネーター
株式会社イノベーションシフト 代表取締役 浪木克文 氏
■プロフィール/(株)リクルートで23年間、人材をベースとした地域活性事業にあたる。人材活用や育成による組織強化~地域の活性化へつなげる講演や研修経験が豊富。2021年福島市に移住し、地方での働き方を実践し、地方採用におけるターゲティングから採用実務の強化、そして自走できる仕組みづくりを得意としている。
■支援内容/採用マーケティングの視点を踏まえた採用活動への理解促進と実践レクチャーを実施。
STEP1
現場から採用活動のヒントを探す
第1回目:2024年9月5日
地域の未来を支える電気工事の現場見学
今回の見学では、電気工事が地域の未来を支える産業やプロジェクトに深く関わっていることを知ることができました。
1. 電気自動車修理工場:未来のモビリティの安全・安心を支える拠点
電気自動車修理工場の建設現場では、効率化された作業プロセスと高い技術力が求められることが分かりました。今後、急成長するEV市場において、同工場は未来のモビリティの安全・安心を支える重要な役割を担っていくことになります。
2. アグリカレッジ福島(福島県農業総合センター農業短期大学校):次世代を育てる場所
将来の農業の担い手を育成する「アグリカレッジ福島」内に建設中のふくしま農業人材育成センター(仮称)は、研修施設と学生寮が一体化した施設であり、その整備に深く関わっていることが分かりました。学生の実践的な学び、革新的で最先端の攻めの農業をけん引するリーダーを育てる農の拠点整備を通じて、次世代の農業を担う学生の教育環境や住環境を電気工事という側面から関わっている姿が印象的でした。
視察の意義:地域貢献とその重要性を実感
今回の見学を通じて、電気工事士が手がける仕事が地域にとってどれほど重要な役割があるかを改めて実感しました。建設関係の様々な業種の方(職人)が連携し、時代に対応した工場の建設や将来の農業の担い手となる若者の教育環境や住環境の整備を行っており、地域全体で地域の未来を支えていることが分かりました。こうした仕事は、求職者や移住希望者にとっても魅力的であり、地域の活性化に欠かせない存在であることを再認識しました。

採用課題の共有とターゲット戦略の再定義
見学の後は、採用に関する課題を共有し、解決策を模索するディスカッションが行われました。
<採用市場の現状と課題>
採用活動は、特に技術職において超売り手市場の影響を受け、苦戦を強いられています。また、採用ターゲットの明確化が不十分であることが、適切な候補者との接点を減少させる要因となっています。
◆ 採用成功の鍵:ターゲット戦略とペルソナ設定
採用活動の改善に向け、「未経験者」と「経験者」という2つの人材像を具体化しました。
・未経験者:20~40代で、モノづくりへの興味とコミュニケーション力を持つ人材
・経験者:40~55代で資格を持つ即戦力となる人材
これに基づき、両者の具体的なニーズや関心に応じたペルソナが設定されました。
<新たな採用戦略へのヒント>
今回の見学を通じて、採用成功の鍵はターゲットを明確化することにあると改めて実感しました。採用活動が難航している背景には、若手人材の価値観やニーズの多様化があり、一律のアプローチでは届かない現実が浮かび上がりました。その中で、ターゲットとなる求職者が何を重視しているのかを深く理解し、具体的な人材像を描くことの重要性が明確になりました。
STEP2
魅力を再発見し、採用成功への新たな道筋を描く
第2回目:2024年10月2日
採用のカギは「企業の魅力因子4P」にあり
ふじ電設様の採用戦略をさらに深掘りするため、企業の魅力をどのように整理し伝えるべきかについて議論が行われました。その結果、企業が持つ強みを「魅力因子4P」に基づき再認識する機会となり、新たな採用アプローチへのヒントが見えてきました。
・企業の魅力因子4P:ふじ電設の強みを解剖する
議論では、ふじ電設様の魅力を「理念・ビジョン(Philosophy)」「人・組織(People)」「事業内容(Profession)」「特権・制度(Privilege)」の4つに分け、それぞれが求職者にどのような価値を提供できるかを深掘りしました。
<理念・ビジョン(Philosophy)>
・ライフラインの安全を守る社会的意義の大きさ
・誠実さを重んじる企業姿勢と、高品質な仕事へのこだわり
<人・組織(People)>
・裁量を持って主体的に働ける職場風土
・職人気質が光る環境と、成長を実感できる教育体制
<事業内容(Profession)>
・社会のインフラを支える重要な仕事で、「手に職」がつく安定性
・多岐にわたる経験を積むことでキャリアアップが期待できる
<特権・制度(Privilege)>
・有給休暇取得がしやすく、プライベートも大切にできる環境
・資格取得支援や昇給など、成長を後押しする制度

ターゲット別アプローチ:未経験者と経験者、それぞれの心を動かす戦略
採用戦略を具体化する中で、未経験者と経験者それぞれに響くメッセージを明確にすることが大切です。
ふじ電設様の魅力を効果的に伝えるためには、両者の関心やニーズに合わせた情報提供が求められます。
議論を通じて以下のアプローチが整理されました。
<未経験者に向けた訴求ポイント >
未経験者には、まず「なぜこの仕事が社会的に重要であるのか」を理解してもらうことが鍵です。
また、仕事の安定性や成長可能性を強調することで、安心感を提供します。
・ライフラインの安全を守る社会的意義を強調
・多様な仕事内容が学べ、安定した職業として将来性を訴求
・福利厚生の充実により家族やプライベートも大切にできる環境
<経験者に向けた訴求ポイント>
経験者には、スキルアップや裁量権を持って働ける環境を前面に押し出します。
即戦力となる方々に対し、「ここでさらに成長できる」と思わせる内容が重要です。
・裁量権を持ち、自分主導で仕事を進められる
・幅広い仕事でスキルアップが可能
・成長をサポートする社内体制と柔軟な働き方をアピール
≪ 採用戦略における課題 ≫
採用活動を成功させるためには、現状の課題を明確にし、その解決策を見出すことが重要です。
今回の議論では、ふじ電設様が抱える課題について具体的な意見が出されました。
これらの課題を克服することで、より効果的な採用戦略の実現が期待されます。
・魅力発信の具体性不足:特に未経験者には「何をするのか」の説明が不足
・求人媒体選び:どのメディアが最適かが明確でない
・認知度の向上:地元だけでなく広域に向けた訴求が必要
このディスカッションを通じて明らかになったのは、企業の強みを丁寧に整理し、求職者に合ったメッセージを届けることの重要性です。ふじ電設様の持つ魅力を最大限に発信し、未経験者・経験者双方に「この会社で働きたい」と思わせるアプローチを考え、今後さらに具現化していく一歩となりました。
STEP3
採用手法と情報発信の進化を目指して
第3回目:2024年10月31日
採用手法の見直し:ターゲットに響くアプローチを選ぶ
ふじ電設様の採用活動を次のステージへと押し上げるため、今回の議論では「採用手法の見直し」と「情報発信の最適化」に焦点が当てられました。具体的な改善策を共有しつつ、企業の魅力を求職者に的確に伝えるための方向性を模索しました。
採用活動を成功させるためには、ターゲットに応じた採用手法の選定が不可欠です。
会議では、未経験者と経験者をターゲットにした最適な方法を議論しました。
< 議論された採用手法 >
・ハローワーク:無料で利用可能だが、テキストベースのため企業の魅力を伝えるのが難しい
・大手求人サイト:多くの情報を掲載でき、企業の特徴を伝えるのに適している
・人材紹介:ターゲットを絞った採用が可能だが、時間がかかる場合がある
・リファラル採用:社員の紹介を活用する手法。社員の会社愛が重要となる
・SNS活用:イベントや制度のPRに有効だが、運用方法に課題がある
< 問題点 >
・ハローワークでは企業の個性を伝えるのが難しい
・大手求人サイトの利用にコストがかかる場合がある
・人材紹介の信頼性にばらつきがある
・SNS運用が難しいとの声がある

掲載情報の改善とキャッチコピーの工夫
魅力的な求人広告を作成するためには、企業の特徴や魅力を明確にすることが重要です。
他社事例を参考にしながら、ふじ電設様独自のキャッチコピーが検討されました。
< ふじ電設のキャッチコピー案 >
・「部長が一番先に帰る会社です、現場はもっと早く帰れます。」
・「家庭は安定しているが、仕事は刺激的。」
・「ペーパー工事士探してます。」
< 問題点 >
・キャッチコピーの具体性が不足している場合がある
・他社との違いをどのように打ち出すかが課題
・求人広告の内容をターゲットに合わせてさらに磨く必要がある
議論の結果、未経験者と経験者それぞれに向けたアプローチを具体化し、採用活動を効率化する方向性が共有されました。
STEP4
成果とまとめ
明確なターゲット設定と魅力発信で実現した若手人材の採用成功
今回は次世代人材の採用と技術継承を目指し、採用ターゲットの明確化と企業の魅力整理を実施。
採用手法の見直しに加え、注目を集めやすい独自のキャッチコピーとして「部長が18時にはいない会社」を採用しました。
今回は、 Airワーク・indeedプラスを活用した求人掲載を行ったが、1ヶ月で2名の応募、うち1名が内定。
過去に行った大手求人サイトへの掲載では成果が得られていなかったことからも、明確な効果が見られました。
また、採用された若手男性は電気工事に強い関心を持ち、今後の活躍が期待されています。
企業代表の湯川氏は「県南で電気工事に携わった人が将来も業界で働き続けられるよう、魅力発信を強化したい」と語り、業界全体の活性化にも意欲を示しました。
<まとめ>
採用活動は単なる人材確保の手段ではなく、企業の価値を再定義し発信する絶好の機会です。今回の議論を通じて、ふじ電設が持つ魅力を改めて整理し、それを最大限に活かすための道筋が見えました。
ターゲットに応じた最適な採用手法と情報発信を展開することで、企業の認知拡大と求職者からの評価向上が期待されます。