体験企業レポート

中途採用

ティエフオー株式会社

企業紹介

鉄とアルミ鍛造品で、社会とお客様のニーズに対応。高い品質が求められる現場で、ものづくりに誇りを持ち、長く技術を磨き続けたい人が力を発揮できる環境を築いている。国内では東京に本社を構え、福島工場と熊本工場の2つの生産拠点よりお客様へ鍛造品を供給している。また自動車産業の国際化に対応して、1988年に米国、2003年にタイへの進出を果たすなど、積極的な海外展開を行っている。

採用課題

鉄・アルミ鍛造の現場では、長年の経験や判断力が品質を支えてきたが、その価値は個人の技量に委ねられてきた側面もある。今後は、こうした技術や知恵を次の世代へどう引き継いでいくかを、組織として考えていく段階。 これまで「現場を理解し、長く働ける人」を求めてきたが、その人物像や役割は十分に言語化されてこなかった。人を増やすことが目的ではなく、技術と現場を支える仲間をどう迎え、育てていくか。その視点で、採用と育成を一体として捉え直す必要がある。

コーディネーター

株式会社himori 代表取締役 大石豊 氏
■プロフィール/(株)リクルートにて採用広告の業務を経験。その後人材紹介会社にて、東北事業部の立ち上げ責任者として、地元企業と求職者のマッチングを行ってきた。現在は、企業の内側に入り込みながら、採用・組織づくり・対話を軸とした制度設計や採用支援などを行っている。
■支援内容/採用を入口としながら、面接や日常のコミュニケーションを見直すことで、仕事の価値や人の思いを組織内外に伝え、定着と活躍につながる組織づくりを伴走的に支援。

STEP1

現場を見つめ直し、採用の前提をそろえる

2025年9月5日(金)

工場見学で実感した、仕事の重みと現場のリアル

ティエフオー株式会社福島工場にて、実際の製造現場を見学しました。
鍛造・検査・品質管理・金型設計など、各工程を歩きながら、仕事の流れや現場環境、そこで働く人の姿に触れる時間となりました。

<工場紹介>
第一検査工場(メイン):エンジン部品「クランクシャフト」の検査
第三検査工場:車のエンジンに使用される部品「プーリー」の検査
第一鍛造工場:自動プレス機・手動プレスによる加工
アルミニウム鍛造工場:アルミ素材に特化した鍛造工場
第二鍛造工場:クランクシャフトの鍛造

高温環境や危険を伴う工程がある一方で、長年積み重ねられてきた技術力や工夫、そして社会を支える重要な部品を担っているという誇りが、現場の随所から伝わってきました。
また、製造現場で働く女性社員の方はメイクやネイルなどにも気を配りながら働く女性社員の姿も見られ、安全を最優先としつつ、個々の価値観や多様な働き方を尊重する職場環境であることが伺えました。

一方で、その価値や魅力が、外部に対して十分に伝わっていない可能性にも気づかされました。
現場を実際に見ることで、「過酷さ」だけでなく、「かっこよさ」「奥深さ」「誇れる仕事」であることを、社員の方々も再認識する機会となりました。

ディスカッションを通じて見えてきた、採用の本質的な課題

見学を通じて感じたことを起点に、採用や組織について率直な意見交換を行いました。
「人が集まらない」「入社しても定着しにくい」といった表面的な課題だけでなく、その背景にある構造的な問題にも話題が及びました。

中堅層の不足、管理職が現場に入り続けざるを得ない体制、部門間の距離感、日常的なコミュニケーションの不足。
これらは採用活動だけで解決できるものではなく、組織のあり方そのものと深く結びついています。

また、「何を作っている会社なのか」「この仕事は社会とどうつながっているのか」といった点が、社内でも十分に言語化されていないことが明らかになりました。
採用は入口にすぎず、その先にある定着や活躍、育成まで含めて考える必要があるという前提を確認したSTEPとなりました。

STEP2

価値を掘り起こし、採用を“経営の言葉”に近づける

2025年10月16日(木)

採用を“手段”ではなく“経営”として捉え直す

はじめに、前回の工場見学とその後の意見交換を踏まえて、大石氏より「採用に関する考え方」をレクチャーしていただきました。

<採用に関する考え方>
・大切なのは、採用を通して経営を考えること
会社全体で「採用をより良くしていこう」と動くことが、最終的には経営そのものを良い方向へ導くことにつながる。
・採用とは会社の日常そのものが問われる営み
採用は採用広告を考えることではない。挨拶、来客対応、現場の雰囲気、上司と部下の関係性──そうした日々の積み重ねが、求職者にも社員にも伝わっていく。
・採用=投資
採用は成長戦略とセット。人材が地方企業を変える。重要なのは成長意欲である。

大石氏は、これまでに転職希望者を3,000人ほど支援してきた経験から、人が会社を辞める本質的な理由は、条件よりも「孤独」であることと語られました。見てもらえていない、分かってもらえていないと感じたとき、人は静かに離れていくという話は、多くの参加者に強く響きました。

また、前回の意見交換で、社員の方から「待遇についての話はするが、仕事の意義については語り切れていない」と話があったことにも触れられました。
創業100年を目前にした今こそ、「100年目に残したいもの、100年後も残したいもの」を、現場リーダーの想いとして社員と共有し、求職者に発信していくことで、会社としての風土や在り方を形にすることにつながることを示していただきました。

対話を通じて見えてきた自社の「資源」

ディスカッションでは、「自社には何があるのか」「何が強みなのか」という問いを深めていきました。
鍛造・アルミ鍛造という固有技術、設計から製造・検査まで一貫して関われる工程の幅、長年積み重ねてきた顧客からの信頼、そして現場に根づく助け合いの文化。
これらは日常の中では当たり前になっており、改めて言葉にされる機会が少なかった“会社の資源”です。

仕事観や、鍛冶の心に通じる精神性の話題も交わされ、ティエフオー株式会社様の仕事には、単なる製造業という枠を超えた価値や物語があることが共有されたことで、自分たちの会社を誇れる視点を少しずつ取り戻す時間となりました。

また、待遇面だけに頼った発信や思い込みへの気づきも語られました。
実際には、社員の皆様一人ひとりが選ぶ理由を持ってこの会社で働いており、その背景や想いを掘り起こし、伝えていくコミュニケーションが、採用や定着につながるのではないかという方向性が見えてきました。

こうした対話を通じて、ティエフオー株式会社様では、どんな想いを持つ人と、どんな関係性の中で仕事をしていきたいのかが、少しずつ言葉になり始めました。

STEP3

「面接」を通して、会社のコミュニケーションを見直す

2025年11月19日(水)

面接は“特別な場”ではなく、日常の延長にある

本STEPでは、「面接を知る。面接を通してコミュニケーションを知る」をテーマに、採用活動を一過性の取り組みではなく、会社の日常そのものとして捉え直す時間となりました。

大石氏からは、採用とは求人や広告の工夫ではなく、会社の空気や日々のふるまいすべてが問われる営みであることが改めて共有されました。受付での挨拶や、社内の雰囲気、何気ない一言までが、求職者にとっては「この会社で働きたいか」を判断する材料になります。

また、履歴書の読み方についてもレクチャーが行われ、学歴や職歴を表面的に確認するのではなく、「どんな時代に、どんな選択をしてきた人なのか」という背景を立体的に読み取る重要性が示されました。
履歴書は単なる書類ではなく、価値観や判断軸が凝縮された情報の集合体であり、そこから仮説を立てて面接に臨むことで、より深い対話ができることに気付かされました。

反応が人を動かす――面接力の核心に触れる

後半では、「良い面接とは何か」を軸に、面接の機能について掘り下げました。面接の役割は、候補者を評価することと同時に、働く動機を育てることであるという整理がなされ、社員の方々にも「相手の人柄や可能性を引き出す場であるべき」という認識が広がっていきました。

特に印象的だったのは、「反応力」をテーマにしたデモンストレーションです。
面接官が反応を示さない場合と、うなずきや表情でしっかり反応する場合とで、候補者の表情や話の深さが大きく変わる様子を実演で体感しました。社員の方々からは、「これほど違いが出るとは思わなかった」「日常の会話にも当てはまる」といった声が上がり、面接において技術以前に“姿勢”が重要であることを実感する機会となりました。

反応することは、相手に興味や敬意を示す行為であり、それ自体が強い動機付けになります。
この学びは面接に限らず、社内の上司・部下間のコミュニケーションや、日々の現場での関わり方にも通じるものであり、採用力の向上と同時に、組織全体の関係性を見直すヒントが共有されたSTEPとなりました。

面接を「選別の場」ではなく、「相互理解の場」と捉えなおしたことは、今後の採用において、ミスマッチの防止や定着率の向上につながる重要な視点となりました。

STEP4

成果とまとめ

「話し方」よりも「向き合い方」が変わり始めた

今回の伴走支援を通じた最も大きな成果は、採用や面接のテクニック以前に、「どのような姿勢で人と向き合い、仲間を迎え入れるのか」という会社としてのスタンスが整理されたことです。
STEP3で扱った「反応力」や「相手をよく見る姿勢」は、面接の場に限らず、日常のやり取りそのものを見直す視点として共有されました。

社内の方々からは、「自分は質問しているつもりでも、反応が足りていなかった」「話を聞いているようで、実は相手を見ていなかった」といった気づきが多く語られました。
これまで“仕事を回すための会話”になりがちだったコミュニケーションが、「相手の背景や気持ちに目を向ける対話」へと少しずつ意識転換され始めています。

また、チェックインやロールプレイを通じて、体調や感情を言葉にすること自体が、場の空気を和らげ、安心して話せる関係性を生むことも実感されました。
「話しやすさ」は個人の性格ではなく、場のつくり方次第で変えられるものであるという認識が、社員の方々の間で共有されたことも大きな前進です。

これらの気づきは、今後の採用活動にも直結していきます。仕事の厳しさだけでなく、現場に根付く誇りや技術の奥深さ、人と人との関係性を大切にする文化を、求人や面接の場で自分たちの言葉として伝えていく土台が整いました。

こうした変化は、採用活動だけでなく、日々の指導や部下との関わり、部署間の連携にも波及していく土台となります。
人を評価する前に、人を理解しようとする姿勢が、組織全体に芽生え始めていました。

採用を入り口に、組織のあり方を見直すフェーズへ

今回の伴走支援を振り返ると、「どう人を採るか」ではなく「どんな関係性の中で人と働くのか」を問い直すプロセスであったと言えます。

人が辞める理由の多くは、条件ではなく孤独やすれ違いにある。
その前提に立ち、日常のコミュニケーションを少しずつ変えていくことこそが、結果として採用力や定着力を高めていく──その方向性が、社員の皆様の中で共通認識として形づくられました。

今後は、この気づきを一過性の学びで終わらせず、
・現場での声掛け
・会議や面談の進め方
・新人や中途入社者の受け入れ方
といった具体的な場面に落とし込んでいくことが重要になります。
採用をきっかけに、経営や組織の空気そのものをより良くしていく。その第一歩として、今回の伴走支援は確かな意味を持つ時間となりました。