体験企業レポート

新規採用

株式会社長谷川機械製作所

企業紹介

1928年創業の小型工作機械メーカー。「大は小を兼ねない」をスローガンに、コンパクトで高速高精度な工作機械の製造に取組んでいます。小型工作機械をよりコンパクトに、より魅力ある優れたものにするべく、日夜開発・製造に励み、創業90年以上の当社だからできるご提案で、お客様の生産向上に寄与することを目指しています。

採用課題

以前から高校生と大学生を対象にした新卒採用に取組んでいた。しかし、採用数に波があったり、また具体的な手法があるわけではなかったので振り返りができない状況であった。これらを改善するため、求職者(若者や学生)の視点で自社の強みや魅力を客観的にとらえ、今後は再現性のある採用活動をしていきたいと感じているが、どのように進めていけばいいのかが分からなかった。

コーディネーター

福島学院大学 短期大学部 情報ビジネス学科 教授 情報ビジネス学科長兼任 木村信綱 氏
■プロフィール/大学での指導、企業や地域との連携した取り組みを行っている。具体的には、企業や団体と連携し「まちづくり」、「商品開発」、「情報発信」、「イベント企画運営」など年間を通して60件以上の地域連携プロジェクトを展開。企業や地域の魅力を見つけ出し、学生を絡めて様々な角度から地域振興につながる意見を引き出していくことが得意。
■支援内容/新卒採用に取組むにあたり、求職者(若者や学生)視点での企業の強みや魅力を再認識すること、そして継続的な学生との接点をつくること

STEP1

現場から採用活動のヒントを探す

第1回目:2023年12月8日

工場見学から技術力の高さが見えてきた

まずは、ものづくりについて理解を深めることからスタート。
長谷川社長より、白河工場で実施している作業の一連の流れをご案内いただきました。

長谷川機械製作所様では、「大は小を兼ねない」を企業コンセプトに、小型NC旋盤、小型マシニングセンタ等の工作機械を製造しています。
使用されている業界としては幅広く、自動車部品、半導体製造装置部品、医療部品、光学部品など。加工機製造を強みとしてロボットやローダーなどを組み合わせた自動化も得意としているそうです。
また、工作機械のキーデバイスといわれる「スピンドル」という部分は内製化しており、専門的な知識と経験を集結させることで、お客様のニーズに合わせた高品質な工作機械製造を実現しています。
※「スピンドル」=工作機械で最も重要な「回転する軸」のこと

そしてスピンドルの製造技術を活用した「コマ」の制作にも取り組み、大会へ出場し優勝していることが紹介されました。

現状の活動から学生との共通点が見つかる

次に、場所を会議室に移してディスカッションが行われました。

まずは、長谷川機械製作所様の採用活動について
どのような採用活動をしているのかを話し合った結果、下記のようなことが分かりました。

■ 現在の採用活動について
・新卒の求人媒体を活用しているが、応募があったり、なかったりする
・高校と大学への訪問が行われている。訪問時には企業情報を伝えている
・学校訪問に提供する情報やアプローチを変えることで採用機会の拡大につながるのではないか。でもやり方が分からない

これらの活動に対してコーディネーター木村先生から、以下コメントがありました。
=====
・採用において、まずは会社のことを知ってもらい、興味を持ってもらうきっかけづくりが大切であること
・特に、長谷川機械製作所様では、世界で戦える技術力があること
・その魅力を知ってもらうためには地元の学生に直接現場を見てもらい、企業の魅力を直接感じてもらうことが必要ではないか
=====

このコメントから、会社の情報発信について確認することになりました。
採用活動以外の場面で、どのように会社のことや技術力を発信しているか?について話し合ったところ、
下記のような取り組みをしていることが分かりました。

■ 採用以外の長谷川機械製作所様の情報発信について
・学生との接点作りとして、高校生や中学生向けの工場見学
・ものづくりに興味のある学生にアプローチとしてものづくりコンテストの主催
・地元の人からの信頼も重要であり、年に1回のプライベートショーの実施
・地元ものづくり企業が集まって技術力を競う「コマ大会」への出場
・「コマ大会」への取り組みの中で、実業高校の学生へ技術の向上のアドバイスを行っている

この中でも
会社の技術力をアピールするためにコマ大会に出場し、その「コマ大会」を通じて、学生との接点がある
ことは、非常に重要なポイントでした。

第1回目では、【コマ】が学生との接点になり、興味を引く強力な種まきとなるのでは?という採用活動のヒントが見えてきました。

STEP2

会社の技術力と「コマ」の関係性を深堀りする

第2回目:2024年1月23日

「コマ」を通じた、学生との接点について

第2回目の前半は、前回話題にあがった「コマ」について、理解を深めるところから始まりました。

長谷川機械製作所様が所在する西郷村では、商工会工業部会主催で「西郷村コマ大戦」を開催しています。
これは製造業者が自社の誇りを賭け作成したコマを持ち寄り1対1で戦う大会で、長谷川機械製作所様は優勝を果たしています。

その大会には 近隣の高校からの参加もあり、交流もあるそうです。

このような状況から
・「西郷コマ大戦」での優勝や入賞情報をメディアにて発信することで、PR効果を高められるのではないか
・高校生のコマ制作の活動をバックアップすることで高校との連携が深まるのではないか
という意見が出されました。

「コマ」を通して、できることは?

次に、「コマ」を通して 学生との接点を作るためのアイディア出しを行いました。

■ 高校との接点をつくるためにできること
・コマ大戦に参加した高校へ訪問し、校長先生へ成績を報告したり、成績をたたえあう(表敬訪問のようなイメージ)
・大会に参加する学校へユニフォームを贈呈する
・技術支援(作業機械の体験、操作技術の指導、設計の基礎、加工手順の説明)を行う
・高校生向けのインターンシップを企画して、コマ制作を行ってもらう
→ 地元の高校生と協力している会社であること、コマ制作を通して高度な技術をもっている会社だとアピールすることが出来る!
→ プレスリリースもあわせて行うことで広報PR活動につながる!

■ オンラインで学生とつながる仕組みづくり
・SNS(X、Instagram、Youtube)、WEBを活用してコマ制作に関する情報を発信する
・大会に参加する学生への応援メッセージを伝える。
→ 日常的に学生とつながれる仕組みをつくり、ものづくりに興味を持つ高校生とのつながりを強化する!

誰しもなじみがある「コマ」を通じた活動を発展させることで
・学生を応援している企業であること
・技術力の高い企業であること

という、長谷川機械制作所様の特徴を知ってもらうきっかけにつながっていくことが見えてきました。

次回はこれらの具体的なアクションプランを考えることとして、第2回目を終了しました。

STEP3

学生とつながり、そして継続するには?

第3回目:2024年2月19日

学生も加えて、会社の魅力を深堀りする

3回目は、オブザーバーとして日本大学工学部の学生2名にも参加していただきました。
参加していただいた目的は、
・求職者(学生・若者)目線での会社の強みや魅力を確認する
・「コマ」を通じた、採用活動や会社情報発信のアイディアについてフィードバックをもらう
ためです。

まずは学生も交えた工場見学を実施し、会議室にて話し合いが行われました。

長谷川機械製作所様から「コマ」を通じた取り組みについて、3つのアイディアが発表されました。

1)地元の実業高校との連携について
・大会出場後に高校へ訪問して、成果発表会を実施する
・研究会のような組織をつくり、コマづくりの技術指導を行う

2)情報発信について
・高校生とのつながりはLINEグループを活用する
・社外への発信は、SNSを活用する

3)採用活動について
・3~4日程度のインターンシップを実施し、社内でのコマづくりを通して技術力を知ってもらう


これらのアイディアを聞いた学生からは様々な意見が出されました。

1)地元の実業高校との連携について
・自分は電気関係のことを学んでいるので「配線体験」は心ひかれる
・「コマ大会」のコマをつくる技術をもっと発信するべき
・教授や先生を巻き込み、学生へ発信できると参加の角度は高くなりそう

2)情報発信について
・チラシなどで周知する場合には、他社のものに埋もれないような工夫が必要だと感じた
・参加の入り口である「申し込みフォーム」は目立たせて、発見しやすくすること

3)採用活動について
・情報が見つけづらい。WEB上で500社ほどの説明会があり、求人情報見も見づらい
・教員の視点でインターンシップ内容にアドバイスをいただけないか?とアプローチして学生を巻き込む
・学生同士の広いコミュニティをもつハブになる学生に声をかけてもらう

これら長谷川機械製作所様と学生の意見から コーディネーター木村先生から、以下コメントがありました。
「学生を巻き込んだ活動は、採用においても非常に効果的」
「就活で口コミを重視する学生は多いので、知ってもらうきっかけづくりやはり重要」
「また一方で、繋がり続けられる仕掛けがないと、企画の効果が半減する」

まとめ・その後のアクションについて

コーディネーター木村先生からのコメントを踏まえて、今後の具体的なアクションプランとして下記を実施することになりました。

■「コマ」に特化したSNSアカウントの立ち上げ
→ 興味を引くユニークで覚えやすいアカウントにする(例:世界最強のコマを作っています、回転研究所 など)
→ 「コマ」に関する情報を徹底的に発信する

■「コマづくり」インターンシップの実施
→ プログラムづくりから学生を巻き込むことで課題解決型インターンシップとする
→ ハブになる学生呼び込み、継続的なつながりをつくる

以上、3回の話し合いを通して、
・求職者(若者や学生)の視点で会社の強みや魅力の把握
・再現性のある採用活動の仕組みづくり
の方向性がまとまってきました。

長谷川機械製作所様が、
当初感じていた課題の解決に向かう、企業と学生の密な関係を築く戦略的なアプローチにつながることが期待できそうです。