体験企業レポート

中途採用

株式会社昇栄

企業紹介

物流プロフェッショナルとして、荷役梱包作業の請負・第一利用運送業・一般貨物自動車運送事業などの事業を行っている。物流は、経済と市民生活の重要なインフラ。地域を元気にするリーディングカンパニーとして企業活動を展開している。

採用課題

物流・倉庫業のリーディングカンパニーとして、白河地域を中心に事業を展開をしている株式会社昇栄様。業務拡大に伴い人材の増員を進めるものの、「労働人口減少」「物流倉庫業=大変そう、きつそうというイメージ」などの要因から、採用活動に苦戦していた。これらを踏まえて従業員の定着率をあげるため、人事制度の見直しと評価制度の改定などを進めており、今後「採用」と「定着」を両輪で進めていきたいと感じているが、どのように進めていけばよいのか不安を感じている。

コーディネーター

株式会社アフターリクルーティング 代表取締役 池谷昌之 氏
■プロフィール/(株)リクルートで人事(採用)、研修・採用に関する企画営業を経験し、独立後は採用力強化に尽力。過去3万人を超える学生に就職活動における講演実績多数。人材をベースとした支援経験から、地域や企業の良さを引き出し、外部との関係作り~定着までの構築に強みを持ち、人材をベースとした支援経験から企業の良さを引き出し、採用手法から定着までの構築を得意としている
■支援内容/インナーブランディング=会社の理念や想いを従業員一人一人が理解し共感する風土づくりを通して、採用と定着を支援すること

STEP1

現場視察と社員インタビュー

第1回目:2024年2月5日

物流倉庫見学をし、昇栄様の強みを把握する

まずは昇栄様の事業概要について理解を深めるため、働く環境の見学を行いました。見学場所は、お客様から作業を請け負っている物流倉庫。
昇栄さんでは自社倉庫での管理もしますが、お客様からの倉庫業の運営全体を請け負い、物流管理のオペレーションを構築し高品質で提供することを強みとしている企業です。その強みを知るために、実際の現場を見学させていただきました。

見学させていただいた場所は、日用品を取り扱う倉庫。製造メーカーの倉庫内で、出来上がった商品の管理と出庫までの一連の流れをご説明いただきました。こちらの倉庫は日々商品が動きます。そのため、その日の状況に応じて、効率の良いローケーションと作業のオペレーション構築を臨機応変に組み立てる必要性があります。また倉庫内は、人とフォークリフトが行きかう現場でした。効率性やスピードを重視しながらも、安全性の確保などについても十分に気をつけている様子が分かりました。

従業員・役員へのインタビューから、新たに見えてくるもの

後半戦は、場所を移動して2名の方にインタビューを行いました。
1人目は、現場で働く入社6年目の社員様。現在の仕事状況や職場環境、入社のきっかけ、仕事のやりがいなどを詳しくお聞かせいただきました。お話の中からは、実際に働く方の入社前後のギャップ、働く人が感じている会社の強みが感じられました。
また、日々の現場でのきめ細かいコミュニケーションが作業ミスを減らし、お客様への信頼につながっていることが分かりました。

次にインタビューを行ったのは、専務取締役の山崎様。
現状確認と課題を明確にするために、会社概要・経営状況や求める人物像などを伺いました。経営層からのインタビューということで、いままでの事業の経緯や中長期的なビジョンなどを詳細に確認しました。
その中では
・事業の成長に合わせた人材の確保が困難になってきていること
・3K的な業界独自のイメージが人材の定着のハードルになっているのではないか

という課題が見えてきました。

最後にコーディネーター池谷さんより、1回目のまとめと今後の進め方のお話があった。

「まとめ」
・昇栄さんがお客様に選ばれているのには理由があること
・昇栄さんを選んで入社している方がおり、その方が感じている会社の魅力があること
・これらの魅力を明確にし、社内に発信することが「インナーブランディング」につながること
「インナーブランディング」の取り組みは、社外に向けた「採用力強化」にも影響があること

「今後の進め方」
・インナーブランディングの理解を深めること
・働く人が感じている ①会社の強み、②組織の魅力、③働く人軸(やりがい)、④働く人軸(入社の理由・入社前後のギャップ)の4つのポイントに分けること

最後に、追加で社員さんの声を確認するために、今回インタビューした方以外にもアンケートを実施することにしました。
そして、次回以降それらの内容の深堀りすることを決めて、第1回目を終了しました。

STEP2

インナーブランディングの理解促進と具体的な手法を学ぶ

第2回目:2024年2月22日

社員インタビューの深堀り

第2回目の前半は、前回の社員インタビューと、追加で実施した3名の社員のアンケートの内容の確認を行いました。

まずは、下記の4つの項目に分類しました。

■入社した理由:同級生の友人に紹介された/求人のチラシをみて条件が良かったから/フォークリフトや物流の仕事に興味があったから/自分の経験が活かせると感じたから

■入社して良かったこと:土日休みで、自分の時間が取れるようになった/フォークリフトの運転が上達したこと/周囲の方とのコミュニケーション能力が身についたこと/講習や資格取得に前向きな職場であり、スキルアップできる環境だと感じたこと

■入社して残念に感じたこと:人材が定着しないこと/仕事になじめずすぐに辞めてしまう人がいること/年配の人が多く、若い世代が少ないこと

■やりがいを感じられるシーン:一人で業務を完遂することができるようになったこと/仲間と協力して作業に取組んでいること/協力会社様と協力して仕事をやり遂げたとき/新しい知識や経験が必要になったときにモチベーションが高まること

そしてこれらについて、コーディネーター池谷さん、昇栄様の人事の方とディスカッションをしていると4つのキーワードが見えてきました。

「成長」「達成」「協働」「ワークライフバランス」

次回以降、これら4つのキーワードを中心に社員さんの具体的なエピソードをヒアリングすることとしました。

ヒアリングすることで、
・社員さんが自社の魅力をより理解することにつながる
・社員さんが自社の魅力を発信できるようになる
・社員さんを採用活動に巻き込むきっかけになる

という効果が期待でき、
会社の理念や想いを従業員一人一人が理解し共感する風土づくり=インナーブランディング 
につながっていくことを目指します。

インナーブランディングを踏まえた、採用活動のポイント

第2回目の後半は、コーディネーター池谷さんから具体的な採用活動のポイントを解説いただきました。

採用活動を、
「会社に定着しアウトプットを出す(会社の成長に寄与する)人材に対して、入社動機を設計すること」と定義づけ 
下記、3つを行うことが大切であると、コメントがありました。

①アウトプットを出すであろう人材を言語化する
②会社の魅力を整理する
③求める人材像(①で言語化した人材)が魅力に感じるであろうポイントを「いつ」「誰が」「どのように伝えるのか」をプランニングする


一つ一つ具体的に見ていくと、

①アウトプットを出すであろう人材を言語化する
→ 社員インタビューで見えてきたキーワードについて、具体的な事例(エピソード・イメージできるシーン)を掘り下げる

②会社の魅力を整理する
→ 働く人が感じている、「会社の強み」、「組織の魅力」、「働く人軸(やりがい)」、「働く人軸(入社の理由・入社前後のギャップ)」などから会社のグッドポイントを整理する

③求める人材像(①で言語化した人材)が魅力に感じるであろうポイントを「いつ」「誰が」「どのように伝えるのか」をプランニングする
→ 採用コミュニケーションの設計=「企業」と「人材」の共感のポイントをつくること

という流れで構築されると解説がありました。

また、現在 昇栄様では、
・目標管理システム、評価制度や等級制度の導入
・教育記録カードでの成長支援
・協働の推進、ワークライフバランス推進
の取り組みも始めており、これらについても会社の強みとしてアピールしていきたいというお話がありました。

最後に昇栄様の人事担当の方より、
「採用活動のポイントが明確になったので、積極的に採用活動に活かしていきたい。経営者と社員を巻き込んだインナーブランディングとペルソナ設定を強化していきたい。」という感想をいただき、2回目を終了しました。

STEP3

社員を巻き込み、採用活動を加速させるためには

第3回目:2024年3月8日

インタビューから見えてくる、働く人のエピソード

第3回目は、追加で社員インタビューを行いました。

前回までのインタビューや話し合いのなかで見えてきた 
4つのキーワード「成長」「達成」「協働」「ワークライフバランス」について、より具体的なエピソードで表現するためです。

転職のきっかけ、仕事の内容、仕事のやりがい、会社の魅力、今後の目標などをヒアリングした結果、以下のようなエピソードを確認することができました。

■ Aさん(女性)短大卒、他業界で仕事をしたのち 2018年昇栄様へ入社
仕事内容:PC入力がメイン、ピッキングリストやドライバーさんへの伝票・指示書作成など
「仕事を覚えるまで3ヶ月程度かかりましたが、先輩社員や同僚のサポートがあり、未経験でも安心でした」
「幅広い年齢層とのコミュニケーションが活発。女性は少ないが、周りの方がとても優しい職場です」
「休憩中にドライバーさんに缶コーヒーをおごってもらいました。お返しにお菓子をあげました」
「段取りを工夫することで効率的になり成果が出ることに達成感を感じます」
「昇給や賞与が頑張った分、反映されることにやりがいを感じています」

※Aさんのインタビューから
→ 仕事とプライベートのバランスが取れる職場の様子がとても伝わってきました
→ 物流の舞台裏で活躍する現場事務職の仕事の魅力が感じられました


■ Bさん(男性)高卒、新卒で昇栄入社。3年後転職して大型ドライバーの仕事へ。その後、再び昇栄へ。現在7年目
仕事内容:倉庫内の置き場管理、商品管理、倉庫内の作業指示など
「刻一刻と変わる判断業務なので、自分の計画通りにうまく仕事が回るとやりがいを感じる」
「メンバーと協力して、チーム一丸となり やりきった時が達成感」
「日々変わる状況に柔軟に対応する必要があり苦労するが、ベテランの方がアドバイスしてくれて、チームで協力して仕事を進めることができる」
「1年ごとに色んな業務に挑戦することで、キャリアの幅が広がりました」
「有給休暇はシフトを調整することで、計画的に取得しやすい環境です」

※Bさんのインタビューから
→ 仕事に対する真摯な姿勢がやりがいと成長に繋がっていると感じました
→ 刻一刻と変わる現場での挑戦する姿が感じられました


■ Cさん(男性)高卒後、建設系企業へ入社。その後、安定的な収入を求めて2018年昇栄へ入社。現在、主任として活躍している
仕事内容:倉庫内作業の指示業務、倉庫間での連絡調整など
「入社後は一般社員から主任に昇進し、給料もあがり、生活の安定を感じています」
「常に感謝の言葉を大切にし、コミュニケーションを取っています」
「コミュニケーションを大切にすることがミスを減らすことにつながり、品質向上に寄与していると感じます」
「大手企業との直接取引があり、信頼されている仕事環境だと感じます」
「今後はリーダーへの昇進を目指し、期待以上の仕事をするよう意識しています」

Cさんのインタビューから
→ 注目されている物流業界で、昇栄様は安定感と成長の機会を与えてくれる魅力的な企業であると感じました
→ 主任としてのポジションで感じる責任感と目標に向かう姿が感じられました

まとめ、その後のアクションについて

今回 昇栄様で行ったのは、インナーブランディング視点での採用活動の実践です。

【インナーブランディング視点での採用活動のポイント】
①アウトプットを出すであろう人材を言語化する
②会社の魅力を整理する
③求める人材像(①で言語化した人材)が魅力に感じるであろうポイントを「いつ」「誰が」「どのように伝えるのか」をプランニングする


具体的には、下記のような手順で進めていきました。

①アウトプットを出すであろう人材を言語化する/②会社の魅力を整理する 
・活躍している社員インタビューの実施
・インタビュー内容を、「会社の魅力」/「組織の魅力」/「入社理由」/「仕事のやりがい」に分類する
・分類した中から見えてきたキーワードに注目し、そのキーワードを表現するエピソードをヒアリングする

③求める人材像(①で言語化した人材)が魅力に感じるであろうポイントを「いつ」「誰が」「どのように伝えるのか」をプランニングする 
・インタビューから見えたエピソードを、訴求ポイントとして求職者へ伝える準備をする

今後のアクションプランについて
コーディネーター池谷さんからは、こんな提案がありました。
リクルーター制度を検討してはいかがでしょうか。実際のインタビューした社員を巻き込み、会社の魅力/組織の魅力/入社理由/仕事のやりがいを伝えてもらうんです。求職者にとっては、実際に働いている人の声は、誰よりも説得力があります。また社員が自分の言葉で会社の魅力を話すことは、本人のモチベーションアップにもつながります。これらが【採用】と【定着】に良い結果を生み出し、インナーブランディング につながります!」

そしてコーディネーター池谷さんから、まとめのコメントがありました。
採用担当者はプロデューサーです。会社のメンバーを巻き込んで採用活動をすることがインナーブランディングにつながります」
採用がゴールではありません。採用し定着につなげる、そしてアウトプットを出す人材をつくることが大切です

最後に、昇栄の人事担当者様からは下記のような感想をいただきました。
「採用ターゲットの作り方が分かった」
「社内の声を聞くといっても掘り下げ方が分からなかったが実践できてよかった」
「リアリティのある言葉がでてきた」
「実際に社員の声を聞くことで新たな発見もあった。次の活動に活かしていきたい」



今回の活動を通して、昇栄様にとってどんな人が採用ターゲットになるかが、少しずつ見えてきました。採用では、スキル・経験だけでなく、本人の人柄や志向が社風や経営方針とマッチすることで定着率が向上し、採用後のミスマッチが少なくなります。
今後はインナーブランディングとあわせ、社内外のファンづくりの取り組みが前進することが期待されます。