体験企業レポート

中途採用

東北ガス株式会社

企業紹介

1961年(昭和36年)の創業以来、県南地域に「安全第一と安定供給」「信用信頼の精神」「地域社会貢献」の社是の基、都市ガスの供給、販売等を通じて社員一人ひとりが責任と誇りをもってお客様に向き合っている企業である。これからも「基本の徹底」を原点に据え、様々な新サービス、新事業を模索、追求しながらお客様に選ばれ続ける企業を目指している。

採用課題

将来を見据えた人材確保のあり方を再整理する段階にある。業務や役割、育成の道筋が十分に示し切れておらず、新しく入る人が将来像を描きづらい状況にある一方で、仕事の意義や地域に根ざした価値は現場に確かに存在している。それらを整理し、分かりやすく伝えていくことが今後の採用と定着につながる重要なテーマである。特に、地域に根差した仕事にやりがいを感じ、長く働きたい人にとって、将来像が描ける発信が求められている。

コーディネーター

本田 光 氏
■プロフィール/経済学や経営学、心理学のフレームワークを基に、BtoC・BtoBを問わず、顧客企業のマーケティング戦略やブランディング戦略(新ブランド立ち上げ、リブランディング、採用ブランディング等)、経営・事業戦略、製品・サービス企画開発に従事。主な顧客は、メーカー各社(自動車、食品、IT等)、サービス業(医療、教育、ホテル等)、広告代理店、新聞社、NPO法人など多岐にわたる。
■支援内容/採用を経営課題として捉え直し、人材像の整理から現場で実行できる採用アクションづくり、社内への伝え方までを伴走的に支援した。

STEP1

現場の声から始まる、会社の未来を考える対話

2025年8月26日(火)

現場の声から見えてきた「支える仕事」の現在地

はじめに、参加者より簡単な自己紹介を行った後、本田氏よりヒアリングが行われました。まず、社員の方々が採用活動を進めるうえで優先すべきと考えていることを提示し、それに基づいて本田氏よりインタビュー形式でヒアリングが進められました。
質問事項は、日々の業務や働き方のほか、自社で働き続ける理由や辞職者の背景、教育体制、企業に対して意見を伝える機会の有無など。
社員の方々それぞれが、自分のこれまでの経験や取組、自身を取り巻く環境を振り返り、自社に対して思うことを素直に言葉にしてくださいました。
営業部・製造供給部それぞれの現場からは、地域インフラを支える責任感や、暮らしに欠かせない仕事を担っているという誇りが語られました。一方で、業務が特定の部署や個人に集中しやすく、業務負担が大きくなりやすい傾向が見られる現状も共有されました。

共通していたのは、「目の前の人手不足だけでなく、この先も会社が続いていくために、働き方や人材育成を改めて整えていくことが大切」ということです。業務が多岐にわたる中で部署間の業務バランスをどのように改善するか。技術継承に時間を要する業務が多い中で、次の世代にどうバトンを渡していくのか。社員一人ひとりが、自分事として会社の未来を考えている様子がうかがえました。

「人を増やす」前に考えたい、組織の整え方

ヒアリングを踏まえたディスカッションでは、「課題の整理と解決への進め方」が議題となりました。
その中で共有されたのは、採用そのものよりも、まずは今いる社員が力を発揮し続けられる環境づくりが重要だという認識です。

また、新卒・中途採用を同時に進めるのではなく、まずは中途採用を軸に体制を整え、現場の余力を取り戻す必要があるという方向性が確認されました。人材構成を可視化し、年齢や役割の偏りを把握することが、次の一手を考えるための土台になるという共通理解が生まれました。

STEP2

採用を見直す前に、組織の姿を描き直す

2025年9月17日(水)

採用を「欠員対応」から「未来づくり」へ

STEP2では、採用を短期的な人手確保ではなく、会社の未来を形づくる取組として捉え直しました。
職務要件と人材要件の整理を通じて、即戦力にこだわりすぎることのリスクや、価値観や姿勢を重視した採用の可能性について意見が交わされました。

<職務要件>
・業務内容や、職務を遂⾏するために必要なスキル、知識、経験などの具体的な条件
・即戦力を求める際に分かりやすく設定でき、短期間で成果を出しやすい
・「経験者採用」に依存すると、採用対象が限られ、他社との競合も激化する
→結果として、条件に合う人材を採用しても定着せず辞めてしまう事例があった

<人材要件>
・組織や職場の⾵⼟に合い、活躍・成⻑していくために求められる性格的特性や⾏動特性、価値観
・組織文化や現場風土との相性が重要
・「どのような人物であれば組織に良い影響を与えるか」を考えることが大切
→周囲に良い影響を与えたり組織の雰囲気を和らげる人など、職務要件では測れない価値がある

社員の方々からは、「長く働くイメージが持てるかどうかが大事」「相談しやすい雰囲気があるかどうかで安心感が違う」といった声が挙がり、条件面だけでは伝えきれない職場の魅力をどう表現するかが、今後のテーマとなりました。

これにより、求人や採用面接においても、条件だけでなく、仕事の意味や職場の空気感をどのように伝えるのかという視点が明確になりました。

数字で見ることで実感した、これからの選択肢

経営層の社員の方々が作成した人材ポートフォリオをもとに、現状と3年後の姿について整理を行いました。

<現状の整理>
・社員数:20名
・社歴10年未満と10年以上の社員がほぼ半数ずつ
・宿直体制の高齢化と人員減少により負担感が続いている
・管理業務が属人化し、組織的なマネジメントが機能しにくい状態

<3年後のシナリオ>
現状維持の場合:管理層の空洞化、パフォーマンス低下の恐れあり
Goodシナリオ:一部改善は見込めるが事業継続のため、より長期的な取り組みが不可欠
Badシナリオ:自主保安体制維持のリスク増大、事業継続そのものに影響が出る可能性あり

社員構成や役割分担を数値で可視化したことで、管理業務の偏りや、将来的なリスクが具体的にイメージできるようになりました。

STEP3

できることから動き出す、スピード感を持った採用アクション

2025年11月18日(火)

事業を支え続けるための人と役割の再整理

STEP3では、「安全第一・安定供給」という社是を改めて起点として、必要な人員や役割について議論されました。
最低限の人数で事業が回る状態と、働きがいや成長実感を持てる組織であることは必ずしも一致しないという点が共有され、働きがいや成長実感といった更なる付加価値をどう生み出すかが重要なテーマとして見えてきました。

採用計画においても、単なる人数補充ではなく、価値観や使命感をどう伝えるかが、定着や育成につながるという視点が共有されました。

日常の延長線上にある採用アクションの具体化

「できることから始める」という方針のもと、全社員で取り組める採用施策が具体的なアクションとしてまとめられました。
求人票やホームページの表現の見直しに加え、検針票やニュースレターなど、既存の顧客接点も採用の入り口になり得るという視点が共有されました。

その一つとして、年末の顧客向けレターに「新しい仲間を迎えたい」というメッセージを添える取組の実施が決定し、一度に大きく変えるのではなく、小さな一歩を積み重ねていく姿勢が、社内でも共感を得られる現実的なアプローチとして提示されました。

こうした取り組みを通じて、採用は人事や経営層だけの仕事ではなく、日々の業務の中の社員一人一人の取組にあるものだという認識が、社内に少しずつ共有され始めました。

STEP4

成果とまとめ

本事業で得られた主な成果

本伴走支援を通じて、社員の方々の採用に対する捉え方に大きな変化が見られました。
これは今後の採用活動において、「どんな人に来てほしいのか」「その人にどのような活躍を期待するのか」を社内で共有しながら進めていくための共通の判断軸して活用される見込みです。

これまでの「条件に合う人材を探す」「欠員を補充する」といった発想から、「自社にとって本当に必要な人材とは誰か」「その人が安心して力を発揮できる環境とは何か」を考える視点へと転換できたことは、大きな成果であると言えます。

また、人材要件・職務要件の整理や人材ポートフォリオの可視化を通じて、事業継続に必要な最低限の体制や、将来に向けて強化すべき役割が具体的に整理されました。
これにより、採用や育成を場当たり的に行うのではなく、中長期的な視点で組織を捉える基盤が構築されました。

さらに、年末に顧客へ送付するご挨拶レターに採用メッセージを添えるなど、既存の顧客接点を活かした新しい取組や、求人表現の見直しなど、全社員で実行可能なアクションが具体化されました。
採用活動を求人媒体だけに依存せず、日々の業務や顧客との接点の延長線上で捉え直したことも、今後につながる前向きな変化と考えられます。

企業の現実に沿った進め方を選択したことで、継続的な改善につながる見通しが立った点も、本事業の成果の一つであると言えます。

今後に向けて

採用は、一度取り組めば完了するものではなく、事業環境や人材市場の変化に合わせて見直し続けていく経営課題であるという認識が共有されました。
本事業で整理した考え方や施策は、即効性を求めるものではないものの、企業が自らの未来を描き、主体的に動き出すための確かな一歩となっています。
本取組で整理した考え方をもとに、仕事や職場の魅力を自社の言葉で発信しながら、人が集い、育ち、定着していく採用のかたちへと広がっていくことが期待されます。

今後は、
・レター施策を起点とした社外への発信
・社内での共通認識づくり
・人材ポートフォリオの定期的な見直し
を重ねながら、「人が集まり、育ち、定着する組織」への転換、成長を目指していく方針です。

採用を通じたこの取り組みは、地域インフラを支え続ける企業として、これからも必要とされ続けるための基盤づくりのプロセスであり、その歩みは今後も着実に続いていきます。